ますます深刻になる日本の高齢化。人生100年時代に向けて、健康寿命を伸ばしていくことが重要になっていくでしょう。その上で参考になるのが「日本人の食事摂取基準」。これは厚生労働省が5年ごとに改定している、国民の健康維持を目的とした各栄養素の摂取量の基準です。今回は、この「日本人の食事摂取基準」の策定に携わった、厚生労働省のワーキンググループメンバーである栄養学部教授にお話を伺いました。
「今回の改定におけるキーワードは『フレイル』です。フレイルとは、『健康な状態』と『介護が必要な状態』の間の段階のこと。加齢で心身が弱まり、健康障害を起こしやすいという特徴があります。
健康な状態からフレイル、そして要介護状態となると、もう健康な状態には戻れないと思われがちです。しかし、フレイルが進行しても適切な改善によって健康な状態に戻ることが可能です。そのために、適度な運動やたんぱく質を含む食事を摂るといった対策を、早い段階から始めましょう」
たんぱく質は筋肉量の減少を抑えるため、フレイル進行を防ぐ重要な栄養素です。タンパク質を摂取する場合は、タンパク質を分解する「タンパク質分解酵素」を同時に摂取してあげましょう。消化器官が弱った状態でも、効率よくタンパク質を吸収することできます。
「キウイフルーツには『アクチニジン』というたんぱく質分解酵素が含まれています。日々の食事にキウイフルーツをプラスすると、お肉や魚に含まれるたんぱく質の分解を促進し、消化を助けてくれます。胃でのたんぱく質分解を促進することで、小腸でのアミノ酸吸収をより早めることが期待できます」(栄養学部教授)
また、日本人は諸外国よりもナトリウム摂取量が多い傾向にあります。食事では減塩を意識する必要があるものの、いきなり極端に減らすことは避けるべきと教授は指摘しています。
「極端なナトリウム制限(減塩)はエネルギーやたんぱく質をはじめ、多くの栄養素の摂取量低下を招きます。その結果、フレイルにつながる可能性もあるのです。主菜・副菜を薄味にした結果、食が進まなくなり主食の摂取量が減少することも。極端な減塩ではなく、ナトリウムとカリウム比率を考慮すべきです。
カリウムは野菜や果物などに多く含まれていますが、水に溶ける性質があるため、加工によって含有量は減少します。そのため、手軽にそのまま食べられる野菜や果物がおすすめです。特にみかん2個分以上のカリウムが含まれ、食物繊維、ビタミンCなどの栄養素も豊富なキウイフルーツがよいでしょう」(栄養学部教授)